プランターの肥料・栄養素「なるべく分かり易く理解しようとする」話

プランターの肥料・栄養素「なるべく分かり易く」 ベランダ・プランター・野菜のお話
プランターの肥料・栄養素「なるべく分かり易く」

プランター栽培をしていると、「土づくり」とか「肥料」とか「栄養素」とか、そういう事が大事だという事はなんとなくわかるものの、肥料の入れ方や、どのぐらいの量を入れたら良いのか?など、結局よくわからずに適当に対応してしまう事ってないですか?

「まあ適当にやって、上手く行く場合もあるし、失敗する事もあるよね」という緩いスタンスでやっていく事は全く問題無いと思います。むしろそのぐらいの気楽な気持ちで楽しめた方が良いと思っています。

ですが、もう少しだけ「拠り所」というか「上手く行くための基準」や「考えの方向性」みたいな物も持っておくと、成功した理由や失敗した理由の検証精度が高くなったり、栽培の経験値もたくさん稼げる様になると思うのです。

そして「土の中で実際にどんなことが起こっているのか」をイメージする事が出来る様になれば、より成功しやすくなるのではないかと思います。

ただし私などは「栄養素」や「元素」などの勉強を始めてみるものの、難解過ぎて眠くなったり、思考が停止してしまう事も多いので、お勉強がなかなか進みません。

ですので、難しい記号などの勉強はほどほどにして「なるべく分かり易く」「おおまかな方向性を捉える」ぐらいが丁度良い塩梅なのではないかなと感じております。

という事で今回は、植物にとって大切な「肥料」や「栄養素」の事を、なるべく難しくならない様に「おおまかに・分かり易く」理解しようとしてみる事をテーマとして進めて行きたいと思います。

私と同じ様に、趣味のプランター栽培を楽しんでいる方に読んでいただけたら嬉しいです。

ただし、私の勝手な理論に基づく部分も多々あると思いますので、もし「化学的に根拠のあるしっかりとした理論を学びたい」という方は、別のしっかりしたサイトをご覧いただく事をオススメします・・・。

植物に必要な「17種の栄養素」

小松菜
小松菜

まずは栄養素の話ですが、植物が育つ為に「必要な栄養素」は下記の17種と言われています。

酸素(O),水素(H),炭素(C)窒素(N),リン(P),カリウム(K)カルシウム(Ca),マグネシウム(Mg),硫黄(S)鉄(Fe),マンガン(Mn),ホウ素(B),亜鉛(Zn),モリブデン(Mo),銅(Cu),塩素(Cl),ニッケル(Ni)

しかし、この17種類をそれぞれ見て行くと、細かくて難しいお話になってしまいます。

なるべく分かり易く把握するために、今回は17種類をおおまかに「4つのグループに分けて」それぞれのグループの特徴と、プランター栽培において意識するべき点を併せて確認して行きたいと思います。

【グループ1】酸素(O),水素(H),炭素(C)

光・水・空気などから得られる要素。

植物の基本的かつ重要な働きである「呼吸」や「光合成」を行う際に必要。

当然ながら「呼吸」や「光合成」に支障がある場合は、植物は上手く育ちません。


人間と一緒で植物も「呼吸」をしていますので「空気」が必要です。

葉や茎だけでなく根も呼吸をしていますので、土の中にも空気が通る事が大事です。

そして、植物が活動する為のエネルギーである「炭水化物」を生み出す働きが「光合成」です。

この「炭水化物」が無ければ、植物は基本的な活動をする事も、成長をする事も出来なくなります。

呼吸をするにしても、茎葉を伸ばすにしても、実を甘くするにしても「エネルギー」が必要です。

これらの「呼吸」や「光合成」に必要な要素が「酸素(O),水素(H),炭素(C)」であり「光・水・空気」ですので、何はともあれ非常に大事な要素になります。

【プランター栽培では】

「日当り」「水やり」「通気性」「排水性」などを確認し、育てている植物が快適に「光・水・空気」を取り入れられる様に環境を整える事が重要です。

プランターの置き場所、水やりの仕方、風通しの良い仕立て、土壌環境作りなど、こだわろうと思うと項目は無限にありますが、基本はこの「光・水・空気」を植物が快適に取り入れられる環境作りという事を指針として持っておくことが大事です。

【グループ2】窒素(N),リン(P),カリウム(K)

「3大要素」とも言われ、植物が成長する細胞の元になる栄養素。

必要とされる量が比較的多い為、多くの肥料の主成分となっている。

この3要素は、不足した際はもちろん、多過ぎても問題になる事が多いので「栽培中の野菜に合った量やバランス」で施肥する事が重要。

※肥料成分の表記例
N-P-K = 8-4-4 など
肥料100g中にチッソ、リン、カリが
8%、4%、4%(8g、4g、4g)含まれているという事を表しています。

※三大要素それぞれのおおまかな役割
窒素(N)→葉・茎を育てる
リン(P)→花・実を育てる
カリ(K)→根を育てる

【プランター栽培では】

その「野菜に合ったバランス」というのは都度測る事も難しいので、育てている野菜の種類や、成長段階によって大まかに傾向を把握する程度で良いと思います。

それもよくわからない(または面倒くさい)という場合は、まずは茎葉の成長を促すためにまずは窒素が多めの割合になっている肥料(上記の8-4-4など)をメインとして使用していくと生育段階では無難かと思います。

そのメイン肥料を「追肥するタイミングや量」を、野菜によって調整しながら対応して行けば大きな失敗は少なくなります。

注意点として、窒素が多いと葉茎ばかり茂って実付きが悪くなったり、葉や茎が軟弱になり病害虫被害も出やすくなってしまう場合があります。


例えばナス・トマトなど果菜類の実が着き始めた際は、上記のメイン肥料の施肥を控えめにしたり、リンが多めに含まれる液肥なども併用して行くと、収量がアップしたり実の食味が良くなる可能性が上がります。

【グループ3】カルシウム(Ca),マグネシウム(Mg),硫黄(S)

「中量要素」として3大要素に次いで重要。おおまかには3大要素の働きをサポートする栄養素。

細胞組織を強くしたり、栄養素の吸収・運搬を助けたり、代謝をサポートする。

3大要素メインの肥料だけしか使ってない場合は、だんだんと欠乏しやすくなる。

欠乏すると「成長」が弱くなったり、「病気」にかかり易くなる。

「連作障害」は、連作により特定の栄養素が欠乏する事によって起こる場合が多い。

【プランター栽培では】

土の入れ替え・リフレッシュをする際に、元肥と一緒に「苦土石灰」などを混ぜる事で補充できます。

もし土の入れ替えが出来ない場合は、後入れでも補充可能です。

後入れの場合は、石灰などの種類によっては効果がきつく肥料焼けなどの障害を起こす場合もあるので、天然石灰など「即植付可」や「後入れ可」の様な表記のあるマイルドなタイプを選ぶと無難です。

苦土・硫黄やほかの微量要素も配合されている石灰も売っているので、持っておくと便利です。


原肥の場合も追肥の場合も、数か月~半年に1度ぐらいを目安に補充を意識すると良いと思います。

「石灰」がカルシウム、「苦土」がマグネシウム、「硫黄」はそのままです。

石灰と言うと、PH調整の為に使用するイメージも強いですが、このような「中量要素」を補充する意味も同じぐらい重要になります。

例えば「トマトの尻腐れ」などは、カルシウム欠乏の代表的な症状ですので、欠乏させない様にする事である程度防ぐことが出来ます。

【グループ4】鉄(Fe),マンガン(Mn),ホウ素(B),亜鉛(Zn),モリブデン(Mo),銅(Cu),塩素(Cl),ニッケル(Ni)

「微量要素」と呼ばれる通り、ほんのちょっとずつあれば良いのですが、全く無くなってしまうのはダメという、なんとも分かりにくい要素です。

かといってこの微量要素も、一つ一つ測定しようとする人もあまりいないと思います。

ですので、ここもおおまかな理解で良いと思います。

傾向としては、化学肥料に頼った栽培を続けていると、微量要素を分解してくれる土の中の細菌が減ってしまい欠乏しやすくなります。

有機肥料主体でも、土のリフレッシュをしなければだんだん減って行きます。

足りない物が出てくると、成長不良・病気などが発生しやすくなります。

【プランター栽培では】

新しい作物を植える前に、出来るだけ土のリフレッシュを行い、多様な有機物を混ぜ込む様にします。

私は栽培用のプランターとは別で、堆肥作成用の鉢を作って枯れ葉などを熟成(黒土化)させておき、土に混ぜ込む様にしています。

また、ミネラル豊富な海藻由来の肥料など微量要素が含まれる資材も色々販売されています。


それらの有機物に含まれる微量要素が細菌によって徐々に分解され続ける事によって、植物が微量要素を吸収出来る状態が継続しますので、土中に分解できる有機物が常に残っている状態である事が望ましいです。

使用資材の例を見てみたい方は、下記のページもご覧下さい。

有機肥料と化学肥料について

植物が吸収できる栄養素とできない栄養素

石灰とスコップ
石灰とスコップ

プランター栽培では、植物が必要な栄養を吸収できる状態をキープして行くことが大事になります。

その為に肥料を入れて行く訳ですが、「有機肥料」に含まれる「有機物」はそのままでは栄養として吸収できません。

「有機物」は、土壌細菌などによって分解され「無機物」になる事で、やっと吸収できる栄養素となります。

その「無機物」の状態まで加工してから販売されている肥料が「化学肥料」と呼ばれております。

そして「有機」とか「無機」といった言葉は具体的なイメージをしづらいと思いますので、もう少し分かり易い様に見ていきたいと思います。

「有機物」とは・・・「炭素(C)を含む化合物」の総称。(例外あり)

という事なんですが、これもまだ「分かりにくい」ですね。

私は、「有機物」=「植物、動物由来の物」という風に考えています。

有機肥料と呼ばれている物の具体例としては、わら、落ち葉、米ぬか、油かす、魚粉、肉骨粉、生ゴミ、排泄物などがあります。

これらはどれも、元々は植物や動物や魚だった物です。

生ゴミも排泄物も「元々は植物や動物」です。こういった物が「有機物」となります。

そして、「有機物」=「炭素(C)を含む化合物」という事でしたが「化合物」という事なので、いくつかの元素がくっついて出来ている状態という事になります。

例えば、炭水化物、タンパク質、脂質などは、まだ「炭素(C)を含む化合物」(=有機物)の状態です。

これらは、C、O、H、N、Pなどの元素が複雑にくっついて出来ていますので、これを分解していって「炭素(C)を含まない状態」になると「無機物」となります。

細菌や微生物の力を借りて、バラバラに分解して「無機物」となる事で、植物が吸収出来る栄養素となります。

ご飯とサプリメントの関係に似ている

ご飯とサプリメント
ご飯とサプリメント

これらを踏まえて、「有機肥料」と「化学肥料」を人間の食事に置き換えて考えてみると「ご飯」と「サプリメント」の関係と非常に似ていると思います。

人間も「ご飯」は食べてから栄養素に変わるまでに分解(消化)に時間が掛かりますが、「サプリメント」の場合は化学的に抽出されたすぐに吸収できる状態の栄養素が取れます。

ここ数年のサプリメント市場は右肩上がりですので、多くの人がその便利さに魅力を感じているのだと思います。

そしてサプリメントで必要な栄養が取れれば、健康を増進する事や体を成長させる事も理論上は可能なのかもしれません。

しかし、食事がサプリメントしか食べられないと想像したら辛いですよね・・・。

やっぱり、美味しいご飯を食べたいと思いますよね。

人間も、野菜も同じだと思うのです。

ですが、化学肥料はサプリメントと同様に非常に便利な部分もあります。

必要な栄養素を、必要な量だけ、すぐに効く形で素早く野菜に届ける事が出来ます。

ですが、化学肥料ばかりに頼っていると、食べ物(有機物)を失った土壌細菌は減って行きます。

土壌細菌にとっては、サプリメント(無機物)は美味しくないのだと思います。

そして、土壌細菌の種類や量が減る事で、土の中で分解される栄養素の種類や量も減ります。

当然ですが、17の栄養素の中で欠乏する栄養素が出やすくなります。

そうなると、野菜の成長力や抵抗力が弱まり、病害虫の被害が出やすくなります。

そして、足りない部分や弱った部分をさらに農薬や化学肥料で補う。という悪循環に陥ります。

農家さんがおっしゃる「化学肥料で土が死ぬ」というのはこういった構造なんだと思います。

土壌環境と腸内環境は似ている

腸内フローラ
腸内フローラ

こうして考えて行きますと、野菜の「土壌環境」は、人間の「腸内環境」とよく似ていると感じます。

近年「腸内フローラ」などの言葉も注目されており、人間の腸内で活動する細菌の数や種類などの「腸内環境」が、人間の健康や病気と密接に関わっているという情報を目にする機会も増えました。

人間の腸内でも細菌の力を借りて、栄養素を吸収しやすい形に消化・分解しています。

【人間の栄養分解の例】
・炭水化物 → ブドウ糖
・タンパク質 → アミノ酸
・脂肪 → 脂肪酸・グリセリン
など

ですので私は、土の中でも腸内と近しい事が行われているというイメージをしています。

という事で、土壌を良くする為には、土壌細菌の数や種類に注目し「土壌内フローラ」とでも言うべき細菌の環境を良い状態に保つことが大事になります。

プランター栽培の場合でも、毎回培養土を捨てて新しい土に入れ替えていたり、1年だけ野菜が育てば良いんです。といった場合は、化学肥料メインで育てても良いのかもしれません。

しかし、プランターの土の再利用をしながら毎年野菜を育てて行く場合には、有機質の資材で土壌環境を育てて、土壌内フローラの細菌も育てながら栽培をした方が、結果的に元気で病気に強い野菜が育ちます。

もしかすると、人間もサプリメントに頼った生活を続けていると、腸内フローラに良くない影響が出てしまい、結果的に健康を害する事が出てくるかもしれませんね・・・。



ちなみに、土壌細菌の状態が良いのか悪いのかを、一般家庭で計測する事は難しいですが、土壌の状態(匂い・色・手触り等)を注意深く見ていく事で、ある程度判断する事は出来ます。

その辺りはもし良かったら下記の記事も参考にしてみて下さい。